名古屋・岐阜・岡崎の弁護士が 遺言について法律相談

遺言の破棄になるか

遺言書は大事ですね。最近の裁判例で、遺言について珍しい事件の判断があります。

遺言者が自筆遺言の文面全体に斜線を引いた場合、遺言を「破棄」したことになるかどうかです。

民法では、遺言を破棄すれば遺言を撤回したことになりますが(1024条)、これを変更と考えると、変更した旨を付記して署名し、変更場所に押印する必要があります(968条2項)。

広島地裁では、「破棄」と解釈しましたが、広島高裁では「変更」と解釈しました。では最高裁は?

最高裁は、文面全体に斜線を引く行為は、全体を不要のものとし、遺言の全てを失わせる意思の表れと判断し、「破棄」と解釈しました(最高裁平成27年11月20日判決)。

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フルパッケージ型遺言

フルパッケージ型遺言

フルパッケージ型遺言とは、私が勝手に名付けたものですが、これは、遺言者が、弁護士である第三者に、相続分や分割方法の指定を「委託」する遺言を言います。つまり、どの相続人にどの遺産を相続させるかを弁護士に委託するというものです。

例えば、遺言者は一人暮らしをしていますが、自分で自分のことができなくなったときに、子供らのうち誰が自分の面倒を見てくれるか今は分からないが、将来、自分の面倒を看てくれた子供に財産を多く相続させたいという気持ちがあるとします。でも、そういう事態になったときにはもしかしたらもう遺言を作ることができない状態かも知れません。

また、遺言者にはすでに認知症の妻がいて今は遺言者が監護していますが、遺言者が亡くなった後、どの子供が妻の面倒見てくれるか分からない、面倒見てくれることになった子供に財産を多くあげたい。今はどの子供がそうしてくれるか分からないが、遺言者自身も病弱でいつ倒れるか分からないということもあるでしょう。

そこで、遺言書において、第三者である弁護士に、相続分や分割方法の指定を「委託」し、かつ、遺言執行者に指定しておくのです。そうすると、遺言者が亡くなった後、弁護士が遺言者の意思に沿うように、相続分や分割方法の指定を行い(誰にどの財産を与えるかを決める)、かつ、それを実現するのです。

これは、弁護士を全面的に信用していただいて、まさに遺言者に成り代わって、相続をすべて取り仕切るという遺言です。
私は、この遺言をフルパッケージ型遺言と名付けていますが、こうした遺言もできます。フルパッケージ型遺言の場合、弁護士の責任は重大ですが、相続分や分割方法の指定に際しては、相続人やその他の関係者から事情を聴取するなどして、遺言者の意思に沿うように慎重に判断します。

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遺言の受遺者が死亡すると?

遺言者の死亡により相続が開始しても、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力はありません。これは民法の条文があります(民法第994条1項)。その結果、遺言は初めから存在しなかったことになり、法定相続が開始します。

遺贈については民法の条文があります。ところで、遺言の文言に「相続させる」という遺言が存在する場合はどうでしょうか。

かつては、民法994条1項を類推適用して遺言を無効とする高裁判決と、代襲相続の規定が適用ないし準用されるとして遺言の効力を認め、遺言の相手方とされた者の子が指定された相続分を承継するという高裁判決がありましたが、その後、最高裁判決があり、特段の事情がない限り、遺言が無効になることで決着がつきました。

ところで、死因贈与契約の場合に贈与者より先に受遺者が死亡した場合には、死因贈与契約は無効になるのでしょうか。

これはまだ最高裁判決はありません。民法994条1項の準用を否定して、死因贈与を有効とする裁判例(京都地裁平成20年2月7日判決、水戸地裁平成27年2月17日判決)がある一方、死因贈与を無効とする裁判例もあります(東京高裁平成15年5月28日判決)。

なかなか難しい問題ですね。

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「遺言控除」新設の動き

遺言しておくと相続税が軽減されることになりそうです。納税通信3381号によりますと、政府与党は、相続税法に「遺言控除」を新設する方針を固め、2018年からの導入を目指しています。

これが新設されると、遺言に基づいて相続した場合、基礎控除額に遺言控除を上乗せした額を遺産相続額から差し引いて、税率をかけて相続税が計算されますから、残された遺族の税負担が軽くなります。
 
遺産相続が遺言によって行われる割合が増えてきたと言われていますが、まだ2割台にすぎません。遺言控除の新設は、遺言を普及させて、相続をめぐる親族間の争いを防止することに役立てることが狙いです。

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相続手続支援センター名古屋の代表と勉強会

昨日、相続手続支援センター名古屋の中村代表、伊藤相談室長を講師にお招きして、相続・任意後見などの勉強会を行いました。

金融機関等における預金解約等のご苦労や相続財産調査の方法は大変参考になりました。

松坂屋「友の会」の積立金については、見落としがちな相続財産ですので、今後も気を付けたいと思います。

このような意見交換や勉強会は重要ですので、継続して続けていきたいです。

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相続分や分割方法を第三者に委託する遺言

遺言で、第三者に、自分が亡くなったら遺産を「どの割合」で各相続人に取得させるか、「どのような形」で取得させるか、を委託することもできます。

たとえば、認知症を患っている妻の面倒を見ている夫がいるとします。
今は夫が妻の面倒を見ていますが、自分が亡くなった後、残された妻をどの子供が面倒を見てくれるかは決まっていません。
子供は3人おり、口では面倒を見るとみんな言いますが、最終的にどの子供が夫亡き後、妻の面倒を見てくれるかが分かりません。

しかし、夫は、自分も病気を持っているので早めに遺言を書いておきたいと思っているとします。
そんなときに検討するものの一つとして、相続分や分割方法を第三者に委託する、そういう遺言を作ることもできます。

信頼できる第三者に、最終的に妻の面倒を見てくれた子供に多くの遺産を与えるように指定してもらう、そういうことができるわけです。
そして、遺言執行者も決めておけばより安心です。

@参考文献(遺言に関する文例書式と解説)

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安定した事業継承のために

社長 私もそろそろ年なので、会社を長男に継がせたいと思うのだが、いい方法はあるかね?

太郎 よく相談に見えましたね。何もしないで万一のことがあると大変ですよ。

社長 どう大変なんだね?

太郎 社長のところは、奥さんとご長男さんの他に相続人はどなたでしたっけ?

社長
 二男も会社を手伝っているし、常務の肩書きをつけてある。あと、結婚した長女と二女がいるが。

太郎 株主はどうなってますか?

社長
 全部私が出資したが名義は、私が80%で長男に20%分けてある。

太郎 そうすると社長に万一のことがあって法定相続分で相続すると、奥さんが40%、長男が30%、二男・長女・二女がそれぞれ10%となりますね。
皆さんが仲良く話し合ってくれればいいですが、揉めだすと誰も過半数を持っていませんから、会社経営に支障をきたし、従業員の生活にも影響がでかねません。
社長のところは別でしょうが、会社がらみで親族で揉めだすと骨肉の争いになりかねませんよ。

社長 それは困るね。どうすればいいかね?

太郎 長男さんを後継者にするご予定なら、社長が元気なうちに親族のほか、社員や取引先に長男が後継者であることの理解をしてもらっておくことが第1でしょう。

社長 専務にしてあるし、取引先や銀行には連れまわしている。

太郎 そうすると次に株式や個人資産のうち会社で使っているものなどを長男さんに集中させておく方が好ましいですが、遺留分なんかにも注意して、生前贈与するのか遺言で相続させるのか、税金にも注意して決めておく必要がありますね。
暦年課税制度や相続時清算課税制度などがありますから資産状況に応じて、どちらを選択するか考えたほうがいいですね。

社長 その他には何か考えておくことはないかね。

太郎 株式は一旦分散すると集めるのは大変ですので、とにかく分散しない方法を考えておいたほうがいいですね。
例えば、会社法の改正により株主の相続人に対して会社から売渡請求ができるようになったので、それができるように定款変更をしておいた方がいいかもしれません。
社長は80%の株式を持っているので、1人で3分の2以上の株式を持っているわけですから今なら大概のこ
とは社長1人の意思でできますよ。

社長 他には?

太郎 社長の資産状況にもよりますが、長男さんに集中させると他の親族から不満が出るかもしれません。種類株式を発行して、他の相続人には会社運営に支障のない株式を相続させるとか。

社長 種類株式とは何だね?

太郎 会社は1種類の株式だけでなくいろいろな種類の株式が発行できるのですが、例えば議決権はないが配当を多くもらえる種類の株式を発行して嫁いだ娘さんに相続させたりすると、娘さん方は会社経営にそもそも興味はないでしょうから議決権がなくても文句はないでしょうし、配当を多くもらえるので生活の足しにでき、満足されるとか、拒否権条項をつけた株式を発行して二男さんに相続させ、長男さんが暴走したときは止められるようにするとか、種類株式は9種類くらいあったと思うのでいろいろバリエーションを考えてもいいと思います。

社長 なるほど。いろいろ考えておかないといけないことがあるんだね。

太郎 社長は親族に後継者がおられるからいいですが、親族に後継者がいない場合は、従業員などへ事業を承継しようとするとまたいろいろ考えないといけませんし、後継者がいないようなら、M&Aなども視野にいれないといけない場合もありますね。

社長 M&Aはよく聞くが、どういう意味かね。

太郎 「合併(merger)」と「買収(acquisitions)」の英語の頭文字を取ったものですが、後継者候補がいなくても従業員の生活は守ってやらないといけませんし、長年付き合いのあった取引先の仕事のことも考えないと無責任ですよね。会社も社会的に存在するものですから放り投げるわけにはいきません。

社長 そりゃそうだ。経営者としては、会社は形を変えてでも残って欲しいと思うからね。

太郎 いずれにしても、経営者の元気なうちにどういう承継の方法がいいのか、専門家に相談してその会社に合った承継の方法を早めに考えておくべきでしょう。

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