刑の一部執行猶予が新設されて2年が経過

Aさんは、次のような判決を受けました。「被告人を懲役2年に処する。ただし、このうち6月については刑の執行を2年間猶予する。執行猶予の期間中、被告人を保護観察に付する。」

この判決が確定すると、Aさんは、まず刑務所で1年6月(実刑期間)の懲役刑を執行されます。それが終わると釈放され、残り6月の懲役は、それから2年間、刑の執行が猶予されます。そして、執行猶予が取消されることなく2年間を無事に経過すると、Aさんの懲役は1年6月に軽減されるとともに、先に経過している実刑期間の終了日に刑の執行が終了したものとされます。

このような判決は、従来は見られなかった新しいタイプの判決です。平成28年6月1日から刑の一部執行を猶予する制度が新設されたことによる判決で、制度のスタートから2年が経過しました。

最高裁のまとめによりますと、この制度のスタートから最初の1年間(平成29年5月末まで)で、1596人の被告人に刑の一部執行猶予の判決が言い渡されており、その9割以上が薬物事犯です。薬物事犯の被告人に対しては、実刑期間が終わって執行猶予期間に移ると必ず保護観察を付ける判決が言い渡されます。それ以外の犯罪の場合は、執行猶予期間中に保護観察を付けるかどうかは判決する裁判所の任意ですが、原則として保護観察を付ける運用がなされています。

被告人にとって、刑の一部執行猶予の適用を受けると、全部実刑に比べて早く刑務所から出てこれるメリットがあります。その反面、出所しても執行猶予期間中は保護観察に服さなければならないため、完全に自由になるには長期間(Aさんの場合は出所後さらに2年間)を要するというデメリットもあります。

新設された刑の一部執行猶予の制度は、再犯防止がねらいです。再犯防止に有効だとされている保護観察ですが、全部実刑ですと刑期が満了した後の保護観察を付けることができません。その点、一部執行猶予であれば、猶予期間中は保護観察に服させることができます。要するに、「服役後を野放しにするよりも、少し早めに出所させても一定の期間監督した方が再犯を防げるだろう。」と考えて新設された制度です。

高橋寛

高橋寛

弁護士 高橋 寛(たかはしゆたか)
元検事・元公証人
【主に従事してきた分野】
刑事事件、税務訴訟、交通事故、離婚、相続、遺言、マンションの漏水事故、借地・借家などの事件に取り組んできました。
【著書(共著)】
空き家・空き地をめぐる法律実務(新日本法規出版)
【所属】
愛知県弁護士会所属、同弁護士会「子どもの権利委員会」所属、同弁護士会「人権擁護委員会」所属

関連記事