信号機の不備で無罪となった事例

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

先日、自動車運転過失傷害罪の刑事裁判において信号機の不備を理由に無罪判決を下した事例があります。

被告は、南北の道路から東と南東方向にそれぞれ枝分かれする変形交差点で大型トラックを北向きに運転し、南東に右折したようです。被害に遭った男性の軽貨物乗用車は西向きから南に左折し、出合い頭に衝突したという交通事故のようです。

事故当時、被告側の信号は青、男性側は赤でしたが、左折可能の矢印が表示されていたとのことです。同様の表示が7秒間続く信号周期の信号機とのことです。

裁判所は、検察側の「右折直前に進行方向を見て安全を確認する義務がある」との主張について、右折する車の運転手は、東から左折する車の対面信号は赤と考え、左折してくるのを想定していないとして「信号周期に対する信頼を超えた自動車運転上の注意義務を課すのは相当でない」と判断しました。

また、南東の道路の存在が設定の際に見落とされていた可能性にも触れ「双方の走行を同時に可とする交通規制が相当ではないことは明らか」と不備を指摘しています。

最終的には、「信号機に交通整理の不備があり、事故当事者の刑事責任に転嫁するのは相当でない」と無罪を言い渡し、さらに「本件交差点の信号周期は速やかに改めるべきだ」と関係機関に早期の改善も促す異例の判決となりました。


この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)