所有者不明の土地

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

所有者不明の土地が、九州より広い410万haあるそうです。

山林や、耕作放棄地など、所有者が亡くなって相続が開始しても相続登記の手続きに必要な費用と手間が、土地の資産価値に見合わなかったりするなどの理由から、所有名義の変更がされないのみならず、管理もされず放置され、土地そのものが荒廃していくことが大きな問題になっています。

相続が何回か起きると単独所有の土地の相続人が数十人にのぼり中には外国に移住したりしてその居住地さえ分からなくなってしますケースも決して少なくありません。

そのような場合、相続手続きは困難を極めます。

国土の荒廃は、災害の拡大にもつながっていくでしょう。

公共事業では、土地所有者の確認・同意がとれなくて進行ができない問題があると言われています。

共有地については、民法255条が、共有者が共有持分を放棄したとき、相続人が不存在のときは、その持分が他の共有者に帰属すると規定していますが、その事実の確認に相当の費用と手間が必要であることに変わりがありません。

310万ヘクタールとは、3万1000平方キロメートルですから、37万7961平方キロの日本の国土の8,2パーセントです。本当に広大な面積です。

空き家も820万戸と言われていますが、これも含めて何らかの根本的な法律上の対策が求められるのではないでしょうか。

たとえば、20年間その土地を放置しておくと一定の条件のもとでは他人の所有になってしまう取得時効制度などが参考になるかもしれません。

土地の時効取得の裁判

ある方の法律相談を受けたところ、なんだか分厚い訴状を持っておられました。大変な裁判なのかな、と思いましたが、よく見ると、被告が100名以上になっていて、その中身は土地の時効取得の裁判の訴状でした。
単に、被告の人数が多いために訴状が分厚くなっていただけで、相談者はその被告の1人でした。

時効取得の裁判の対象となっていたのは、とある山林で、かなり昔に土地所有者が亡くなり、相続手続がなされないまま長年放置されてきたようで、その100名というのはその土地所有者の相続人の方たちでした。

はじめて100名以上もの被告を相手にした訴状を見ました。
相続というのは放置してしまうと、大変だな、と改めて思った次第です。

相続登記は速やかにされることをお勧めします

不動産の相続があっても、相続登記の申請期限がなく、義務でもないため放置されることが多いからです。
何代も相続があっても登記をしないまま放置されると、いざ、登記をする時は大変な苦労が待ち受けます。

あるケースでは、司法書士さんに依頼をされた事案でしたが、その司法書士さんがお手上げになって、私共の事務所に依頼されてこられました。

司法書士さんは、何十人もの相続人を調べ上げて一人一人に書面に判子と印鑑証明書をもらう作業をされたのですが、人数が多いため、作業中に印鑑証明書の期限が来てしまい、また、印鑑証明書の再交付をお願いするということを繰り返し、何時までも書類がそろわず登記ができない状態が続いてしまったのでした。

そこで、弁護士から訴訟を起こしてもらって一括で判決をもらう以外に登記ができないとの結論に至り、私共に依頼してこられたという次第です。

最近は、相続人が日本に居住せず海外にいるケースもよく出てきました。
このような場合、訴訟を提起し手続きを進めるのも難しくなってきます。
まず、海外の居住地を確認するのも簡単ではありませんし、居住地が判明しても、裁判所の書類を送達するのに手間と時間が大変掛かり手続きがなかなか進まなくなることがまま出てきます。
ですから、義務がないとしても相続登記を速やかにされることを是非お勧めいたします。

また、土地の管理を怠らないことをお勧めします。
登記名義があっても、他人が10年間あるいは20年間その土地を占拠しておりますと、時効で土地の所有権が占拠していた他人に移ってしまうことがあります。取得時効というものです。


この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)